日も暮れ、ガーデンパーティーが終わる
両家入り交じったテーブルの談笑が途絶えない
何枚か撮ったあと、声をかけて視線をもらった
新郎新婦はカメラを構える私の後ろに座っていて満足げに微笑んでいる

二人に残したこの写真の中には
祖父母がいて、親がいて、姉妹がいて、
おじおばがいて、甥がいる
学生がいて、妊婦がいて、老人がいて、
やがて出づる者とすでに世を去りし者もいる
中央の御大はそれぞれのであってご夫婦ではない

家族というものに意味と価値があって
結婚によってもたらされるは増える喜び
個人的には必ずしも繁栄世界の正なる一員といえないポンコツな私だが
仕事においてこの前提と価値観を疑ったことはない
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# by kelham | 2014-08-25 10:59
吸い込まれるような感覚
息遣いを感じるほど近寄る
静かに早く撮り切る
クローズアップはその場で9割くらい出来上がっている画が欲しい
とりあえず高画素で押さえておいて後から大きく抜くという手法とは正誤に関わらず目的を違える
迫るカメラを花嫁はもちろん知っている
何を撮りに来たかもわかっているし、それを許している
その意識された一瞬に、特別なきらめきと一層の美しさがある
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# by kelham | 2014-08-16 02:48
撮影のマンネリ化をなげく同業の若い人がいて
その気持ちよくわかる
わかるがそれが写真の形式・様式化なら恐れるに足りない
我々の仕事は量産から逃れられない反面、
同じ被写体を撮ることは二度となく、徹頭徹尾リアル一期一会
マンネリズムが平等性や、確実性、満足度を高めるなら何をためらう
特別に一度だけ来店した御客にシェフは気まぐれ料理を試すだろうか
磨き上げてきた彼の定番を、いつもと同じ手順で、なに一つ変えることなく提供するだろう
食べる方はそのために来ている
思いつきや冒険ではなく洗練を食らいに来ている
誰かはしたり顔で言うかもしれない
また同じ料理!つまらないシェフ!作ってて自分で飽きないもんかね!

怖いのは気持ちのマンネリ化
すなわち、婚礼写真家の、ハレに対する怠惰と新しいものへの臆病

旧友と葉山。この砂は猛烈に焼けている
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# by kelham | 2014-08-08 15:16
旧知は苦笑い
私は鞄を持たずクラフト紙製の袋を二つ折りにして脇に抱えて歩く
19の頃、コダック社のラボで夜勤のバイトをしていて、毎朝大量に捨てられるロール型印画紙の外装袋をもったいないと持ち帰ったのが始まり
内側が丈夫な黒ビニールの二重構造でこれが大変な優れモノ
遮光は元より、完全防水、防塵、最軽量、ビジネスもカジュアルもいけるクラシックデザイン(笑)、彼女しだいでデートもO.K
レギュラー(二つ折り)でA4、スプレッド(笑)でA3を収納
マチもサービス判の幅分あるので衣類、交換レンズぐらいは楽勝
個人的にお気に入りの使用スタイルは仕事帰りのスーパー
レジ袋を買わずスプレッドモードで買物満載、アメリカ映画の1シーンのような平和な日常感をさりげなく演出
ぶつかってオレンジがこぼれ、拾ってくれた女性と恋に落ちるかもです

ボロボロになるまで使っては換え、使っては換え
とうとうこれが最後の1枚
コダックは2年前に倒産
たとえブランドが蘇ったとしても黄金期のこの上質な袋はもう作れまい
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# by kelham | 2014-07-31 14:44
積極的に話しかけ
お互いを名前で呼び合うよう仕向け
新郎新婦と即席の友のようになって
親しげに楽しく、進行、ゲストそっちのけで写真を撮るウェディング・フォトグラファーもいる
もちろんいていいし、ひとつのスタイルとしてすでに確立しているが
無粋で二流と知るべきだ

二人の、家族や列席者に対する敬意を共有すること
二人の優先順位を理解すること
二人の信頼を得て、自分は消え、ありのままを静かに確実に撮り切ること
この仕事の上等がこれに尽きるかどうかわからないが
「作品」が残ればいいというものではないとははっきり言える

その一日は写真のためにあるわけではない
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# by kelham | 2014-06-12 16:35
東京梅雨入りの昨日
撮影も打ち合わせもなかったので
珍しく朝から事務所に出向き部屋の掃除
そしてMacの掃除
散らかったデスクトップを整理して、不要データ全削除、外付けHDDへの民族大移動
仕上げにメンテナンスソフトを走らせたら
何をチェックして問題をどう解決してくれているのか知らないが、なんとそれで午前中が潰れた
といっても作業ができなかったというだけで、むしろ喜んで映画タイム
ポストに届いていた「ボーイズ・ドント・クライ」さっそく

午後は軽快さを取り戻したMacで一気に週末納品分を仕上げていき
終電を待たず22時完了
もつ焼き屋で一杯やりながらその映画を薦めてくれた友人にお礼メール
「暗く救いのない気分です。ありがとう」

自分の存在を否定する自分の心と体
他人の理解と無理解と憎悪
性同一性障害に苦しむ少年の哀しい物語
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# by kelham | 2014-06-06 13:11
目白にあるこのシプリアン聖堂には
オルガニスト、聖歌隊のためのロフトがあって
そこに上がるには梯子に近い秘密の急階段をつかう
俯瞰のカットを得るために、挙式中、タイミングを見計らって駆け上がり
数枚撮って、指輪の交換に間に合うように滑り降りて戻った

子供の頃この教会で育ち
このロフトは自分のアジトのような場所だった

ある日、そこで昼寝していると、聖堂に人が入ってきた気がした
それは何も珍しいことではないので起き上がりもしなかったが
しばらくしてなんか変だと感じる
誰かいるにしては気配を消しているような、いないにしては誰かがいる
そっと体を起こし、静かに、怖々と階下をのぞき込むと、一人の中年男がきょろきょろと周囲をうかがいながら献金箱の鍵穴に針金を差し込んで苦闘している
当時その教会の司祭であった父が、その献金箱の鍵をかけないこと、彼らのためにわざわざ小銭を補充していることを僕は知っていたので、
「それ開いてますよ」と上から声をかけた
天の声、なんちゃって・くらいの親切心で言ったと思うが
驚いた男は、ア、スンマセンと中二の僕に頭を下げ、自分の紙袋も忘れて出ていってしまった
その時も、秘密の急階段を滑り降り、忘れ物を返そうと彼を追ったが目白通りの右にも左にもその姿はなかった
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# by kelham | 2014-05-27 13:43
同級生が「震災以降」を上梓
その出版記念イベントで彼が座談会の司会をすると知り
仕事帰りに早足で阿佐ヶ谷ロフト
ハイボールを飲みながら約90分、執筆陣の被災地レポートに聞き入った
会場で本を買うと「サインはいかがですか?」と尋ねられたが
遠慮させてもらい、そのかわり図々しく演壇に近づいて本人に声を掛け
何十年ぶりの握手を交わした

詰めれば100人は入りそうな会場に客は20人ほど
赤字黒字のシステムも想定も知らないが少なすぎる
その数ならそれは客じゃなく知り合いだろう
だからトークの内容も質疑応答もマニアックでピンポイントなものだった
知る者には知らぬ内容で、知らぬ愚か者(私)にはハードルが高すぎる

点と点、線を線で繋いで真実に至らんとする真のジャーナリズムにあって
その最初の良質な一点になるべく、フリーの記者たちは今も被災地に通い続けて血の汗をかいている
鼻血じゃない・
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# by kelham | 2014-05-16 13:58
納品物を持って夜の日比谷公園
ひと気の引いた暗い園道から黒ずくめの女性が歩いてくる
すぐに公園内にある式場のアルバイトの子だとわかったので、
すれ違いざまに「おつかれさまです」と声を掛けたら
ひゃっと驚かれ、「今日はこんな遅くまで?」と続けると
走って逃げていった
いつもスーツだからオガサワラくんだってわからなかったのよきっと
と支配人には慰められたが・

ノー・ポーズ、ありのままの瞬間を捉えるキャンディド・フォトはケラムの特徴で、私のもっとも得意なスタイル
窓越しにドア越しに、木々の奥から葉の隙間から、屋根から柵の外から狙う

これはこれでいつか、怪しいと怖がられてしまうかもしれない
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# by kelham | 2014-05-14 12:31
ハウス系ウェディングの最大の魅力は
オリジナルの演出と進行、手作り感、その苦労と満足だと思う
その一部、三部を新郎新婦の友が担うこともある
この日、会場の装飾は御友人がされたと聞いた
どのアイテムもなぜかスカル柄
なんかあるんだろうが説明は一切なし
無用だ。その秘密な感じが一層いい
スカル&フレンズ
kelham
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# by kelham | 2014-05-04 00:42
最近、涙もろい
散り急ぐ桜の儚さはともかく
花嫁の手紙、父親の挨拶で泣けていたら仕事にならない
今朝は車窓から雨の街を眺めつつ、シャッフルで“ I Like Chopin ”

これでくるとはさすがに怖くなって事務所についてすぐ検索
<歳をとると涙もろくなる理由/原因>
共感力の増加、ナルシズムの克服、前頭葉の老化
ホルモンバランスの不調、うつ病の前兆・・・といったところか
最後のが気になるわたくし
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# by kelham | 2014-04-21 12:43
昔々、経済団体の新年会の集合写真を撮りに行った際
酔った有力者の提案でその大広間にいる全員にビンゴカードが配られた
コンパニオンにも、出前屋台の寿司職人にも、写真屋にも
一等は50インチのプラズマテレビ
「100万円相当のお品でございます、X社の御協賛を頂戴しております、皆様Y社長に拍手をお願いいたします!」と司会者がまくし立て、300人の会場は大いに盛り上がった

後にも先にもビンゴで勝ったことはあの一度しかない
司会者が数字を読み上げるごとに穴が開いていきこれはくるなと思った
リーチと控えめに口にした私に会社の先輩が駆け寄って来て、
「オガサワラくん、わかってる?ダメだよ」と耳打ち
直後、あっさり揃ってしまってビンゴ!
あー、こういうのに当たる時ってこんなシンプルな感じなんだな
と妙に納得しながら、カードを折ってそっとポケットにしまった


ビンゴはウェディング・パーティーでも人気の余興だが
賞が多すぎると時間配分のバランスがよくない
新郎新婦ともっと話したい、久々に集った仲間とゆっくりしたいと願うゲストは、アゲアゲの賞品争奪戦を期待する向きよりも多いように思える
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# by kelham | 2014-04-15 13:22
友だちの建築士が酔うと触る
腹をもみ腿をつかみ髪に触り
やれ締めてるだのサボってるだの、ハゲただの切り時だのうるさい
痛いしかっこ悪いのでなるべく隣席を避けていたのだが、いつしかそれがわるくなくなっていることに最近気づいた
ずっととは言わないが、まあ気の済むまで触ってくれ
前は腹を凹ませ彼に贅肉をつかませなかったが
最近は身を任せて太い余分をがっぷり取られ
「これ要らねーだろ」となじられて嬉しい
Love is touch, touch is love の境地か・

結婚式、披露宴におけるワンちゃんの出席はもはや全く珍しくなくなった
他人に触られまくって奴がどう思ってるか知るよしもないが
顔はさすがにどうなのかとはいつも思う
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# by kelham | 2014-04-09 23:43
楽しいやら苦しいやら
いろいろあるような、なにもないような
空漠とした心持ちでこの月が終わる

桜一気に満開、今週がロケ撮のピークだろう
写真は好調、撮影にもしっかり集中できている
反面、締切を山のように抱えていて、朝、歯を磨いていても気が重い
今月は事務所に泊まることも多かった
深夜作業は大いに捗るがキリがなくて寝不足、撮影の朝が辛い
それでは本末転倒と、適当なところで止めて近くのバーで寝つけ酒
最初は深夜2時過ぎに行ったが二回目は1時、こないだは0時
終電より早いなら帰れって話で我ながら呆れる

月中、友人が亡くなって哀しい
闘病を知って涙はポロリとも出ないが、彼女の死を毎日考えている
あなたの写真が好き、という一行が
グリーティングカードやメールの文末に必ずついていた
自覚もなしに僕はどれだけ救われてきたのか
なにを返したのか

今日は撮影なし
花見もなし
写真を一枚一枚丁寧に仕上げる
kelham
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# by kelham | 2014-03-31 18:38
今日は久しぶりに撮影がないので
朝から撮った写真の整理を続ける
二週間分がたまりに溜まっていて、開けても開けてもフォルダの山
フォルダの中から出てきたフォルダの中からフォルダが出てきて参る

ウェディングの写真制作は
どのカットを納めさせていただくかを選ぶことから始まる
似たものは一枚を決め他を残さない
似て非なるものは一枚も外さない
内容を確実に残すことは元より、写真を減らすこともデジタルカメラ時代のプロの仕事なんだと自他に言っているが、
それは確かにたいへんな作業で、人が聞かないのもわかる
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# by kelham | 2014-03-26 14:25