人気ブログランキング | 話題のタグを見る
日も暮れ、ガーデンパーティーが終わる
両家入り交じったテーブルの談笑が途絶えない
何枚か撮ったあと、声をかけて視線をもらった
新郎新婦はカメラを構える私の後ろに座っていて満足げに微笑んでいる

二人に残したこの写真の中には
祖父母がいて、親がいて、姉妹がいて、
おじおばがいて、甥がいる
学生がいて、妊婦がいて、老人がいて、
やがて出づる者とすでに世を去りし者もいる
中央の御大はそれぞれのであってご夫婦ではない

家族というものに意味と価値があって
結婚によってもたらされるは増える喜び
個人的には必ずしも繁栄世界の正なる一員といえないポンコツな私だが
仕事においてこの前提と価値観を疑ったことはない
kelham.com
ふえてうれしい_a0256698_10285180.jpg

# by kelham | 2014-08-25 10:59
吸い込まれるような感覚
息遣いを感じるほど近寄る
静かに早く撮り切る
クローズアップはその場で9割くらい出来上がっている画が欲しい
とりあえず高画素で押さえておいて後から大きく抜くという手法とは正誤に関わらず目的を違える
迫るカメラを花嫁はもちろん知っている
何を撮りに来たかもわかっているし、それを許している
その意識された一瞬に、特別なきらめきと一層の美しさがある
kelham photograph
キラメキ_a0256698_344570.jpg

# by kelham | 2014-08-16 02:48
撮影のマンネリ化をなげく同業の若い人がいて
その気持ちよくわかる
わかるがそれが写真の形式・様式化なら恐れるに足りない
我々の仕事は量産から逃れられない反面、
同じ被写体を撮ることは二度となく、徹頭徹尾リアル一期一会
マンネリズムが平等性や、確実性、満足度を高めるなら何をためらう
特別に一度だけ来店した御客にシェフは気まぐれ料理を試すだろうか
磨き上げてきた彼の定番を、いつもと同じ手順で、なに一つ変えることなく提供するだろう
食べる方はそのために来ている
思いつきや冒険ではなく洗練を食らいに来ている
誰かはしたり顔で言うかもしれない
また同じ料理!つまらないシェフ!作ってて自分で飽きないもんかね!

怖いのは気持ちのマンネリ化
すなわち、婚礼写真家の、ハレに対する怠惰と新しいものへの臆病

旧友と葉山。この砂は猛烈に焼けている
kelham
熱砂を行く_a0256698_1543898.jpg

# by kelham | 2014-08-08 15:16
旧知は苦笑い
私は鞄を持たずクラフト紙製の袋を二つ折りにして脇に抱えて歩く
19の頃、コダック社のラボで夜勤のバイトをしていて、毎朝大量に捨てられるロール型印画紙の外装袋をもったいないと持ち帰ったのが始まり
内側が丈夫な黒ビニールの二重構造でこれが大変な優れモノ
遮光は元より、完全防水、防塵、最軽量、ビジネスもカジュアルもいけるクラシックデザイン(笑)、彼女しだいでデートもO.K
レギュラー(二つ折り)でA4、スプレッド(笑)でA3を収納
マチもサービス判の幅分あるので衣類、交換レンズぐらいは楽勝
個人的にお気に入りの使用スタイルは仕事帰りのスーパー
レジ袋を買わずスプレッドモードで買物満載、アメリカ映画の1シーンのような平和な日常感をさりげなく演出
ぶつかってオレンジがこぼれ、拾ってくれた女性と恋に落ちるかもです

ボロボロになるまで使っては換え、使っては換え
とうとうこれが最後の1枚
コダックは2年前に倒産
たとえブランドが蘇ったとしても黄金期のこの上質な袋はもう作れまい
top page
ザ・ラスト_a0256698_1432414.jpg

# by kelham | 2014-07-31 14:44
積極的に話しかけ
お互いを名前で呼び合うよう仕向け
新郎新婦と即席の友のようになって
親しげに楽しく、進行、ゲストそっちのけで写真を撮るウェディング・フォトグラファーもいる
もちろんいていいし、ひとつのスタイルとしてすでに確立しているが
無粋で二流と知るべきだ

二人の、家族や列席者に対する敬意を共有すること
二人の優先順位を理解すること
二人の信頼を得て、自分は消え、ありのままを静かに確実に撮り切ること
この仕事の上等がこれに尽きるかどうかわからないが
「作品」が残ればいいというものではないとははっきり言える

その一日は写真のためにあるわけではない
top page
シゲキと呼んで_a0256698_16195033.jpg

# by kelham | 2014-06-12 16:35